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東京地方裁判所 昭和59年(行ウ)92号 判決

東京都渋谷区代々木二丁目二三番一号

原告

株式会社全国信用身元保証協会

右代表者代表取締役

添田工

右訴訟代理人弁護士

中山徹

東京都渋谷区宇田川町一丁目三番地

被告

渋谷税務署長

福中政美

右指定代理人

遠山廣直

赤穂雅之

竹田準一

長岡忠昭

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  神田税務署長が昭和五六年六月三〇日付けで原告の昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日までの事業年度の法人税についてした更正のうち欠損金額四三八九万九八六二円を超える部分並びに昭和五四年四月一日から昭和五五年三月三一日までの事業年度の法人税についてした更正のうち欠損金額一億二一九〇万九七九〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。

2  被告が昭和五九年五月三一日付けで原告の昭和五五年四月一日から昭和五六年三月三一日までの事業年度の法人税についてした更正を取り消す。

3  被告が昭和五九年一二月二五日付けで原告の昭和五六年四月一日から昭和五七年三月三一日までの事業年度、昭和五七年四月一日から昭和五八年三月三一日までの事業年度及び昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度の法人税についてした更正及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五四年三月期」という。)及び昭和五四年四月一日から昭和五五年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五五年三月期」という。)の法人税について原告のした確定申告、これに対して神田税務署長のした更正等の経緯は別表1及び2記載のとおりであり、昭和五五年四月一日から昭和五六年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五六年三月期」という。)、昭和五六年四月一日から昭和五七年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五七年三月期」という。)、昭和五七年四月一日から昭和五八年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五八年三月期」という。)及び昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五九年三月期」といい、昭和五四年三月期ないし昭和五九年三月期の各事業年度を「本件各事業年度」という。)の法人税について原告のした申告、これに対して被告のした更正等の経緯は別表3ないし6記載のとおりである(以下、神田税務署長及び被告のした右各更正を「本件各更正」、昭和五五年三月期について神田税務署長が、昭和五七年三月期ないし昭和五九年三月期について被告がそれぞれした右過少申告加算税の賦課決定を「本件各決定」という。)

2  しかしながら、本件各更正は、原告の所得金額を過大に認定したものであるから違法であり、また、本件各更正を前提とする本件決定も違法である。

3  昭和五九年二月に原告の本店所在地が変更されたため、それまで神田税務署長が有していた権限は被告に承継された。

よつて、原告は、本件各更正(別表7及び8記載のとおり、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期については、確定申告に誤りがあつたため、本訴において取消しを求める部分は、同表の原告主張欄記載のとおり、昭和五四年三月期の更正については欠損金額四三八九万九八六二円を超える部分であり、昭和五五年三月期については欠損金額一億二一九〇万九七九〇円を超える部分である。)及び本件各決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1及び3は認めるが、同2は争う。

三  被告の主張

1  原告の事業の概要

(一) 原告の事業形態は、傘下の総代理店、代理店、特約店、指導員及び取次所(以下「総代理店等」という)を上位から順次〈1〉総代理店、〈2〉代理店、〈3〉特約店、〈4〉一級指導員、〈5〉二級指導員、〈6〉三級指導員、〈7〉四級指導員、〈8〉五級指導員及び〈9〉取次所の9階級に区分し、新たに総代理店等になろうとする者又は身元保証を求める会員を右各階級の総代理店等において募集させ、その応募者を原告に取り次ぐ業務を行わせるというものである。その事業システムは、以下のとおりである。

(1) 原告の総代理店等になろうとする者は、資格取得金名目の金員を、また身元保証を求める会員は、入会保証料名目の金員をそれぞれ原告に支払うことが義務づけられており、その資格取得金及び入会保証料の額は、それぞれ別表9及び10のとおりとなつている。

(2) 新規総代理店等を原告に取り次いだ総代理店等(以下「旧総代理店等」という。)に対しては、新規総代理店等が原告に支払つた資格取得金の額に、別表11に掲げる指導料割合を乗じて計算される金員を直接指導料の名目で支払われることとされている。

(3) また、旧総代理店等(取次所を除く。)の傘下にある下位の新規総代理店等が新たに代理店等を原告に取り次いだ場合には、旧総代理店等が当該代理店等を直接原告に取り次いだとしたならば得られるであろう直接指導料の額から新規総代理店等が原告から受領すべき直接指導料の額を差し引いた差額に相当する金額が間接指導料の名目で当該旧総代理店等に支払われることとなつている。

(4) 身元保証を求める新規会員又は身元保証期間(三年間)が経過した後において更に継続契約を希望する会員を原告に取り次いだ総代理店等に対しては、会員が原告に支払う入会保証料の額に別表12に掲げるそれぞれの割合を乗じて計算した金員を直接入会手数料若しくは継続入会手数料名目で支払われることとなつている。

(5) また、旧総代理店等の傘下にある下位の新規総代理店等が身元保証会員を原告に取り次いだ場合には、間接指導料と同様の計算方法によつて算定される金員が間接入会手数料名目で当該旧総代理店に対して支払われることとなつている。

(二) 原告が営業目的とする身元保証制度(以下「本件身元保証制度」という。)について、その概要を延べると次のとおりである。

(1) 本件身元保証制度は、社会一般に行われている人的保証に代えて、原告の委託を受けて訴外株式会社全国身元保証受託協会(以下「受託協会」という。)が発行する信用身元保証証券(以下「保証証券」という。)を被保証人が事業所等に差し入れることによつて、被保証人が事業所等に対して与えた損害金につき、これを右委託を受けた受託協会において代払いするというものである。

(2) 本件係争事業年度当時における本件身元保証制度には、別表10に示すとおり、〈1〉入学・就職・在職更新・〈2〉賃貸借保証があるが、このうち〈1〉の入学・就職・在職更新に係る身元保証制度の仕組みについて述べてみると、次のとおりである。

ア 被保証人は、原告若しくは総代理店等に対する入会保証料の支払と引換えに受託協会の発行した保証証券を取得し、これを事業所等に差し入れる。

イ 右保証証券の差し入れを受けた事業所等は、同証券に添付されている「信用と身元保証誓約書請求用紙」に所要事項を記載の上、原告に送付する。

ウ 右事業所等に対しては、受託協会から「信用と身元保証誓約書」、受託協会の印鑑登録証明書、受託協会の「登録事項に変更及びある事項の登記がないことの証明書」(法務局の発行に係るもの)並びに損害賠償請求書用紙が送付される。

エ 保証証券は、損害賠償の限度額一〇〇万円につき、入会保証料として金一万二〇〇〇円で購入(このうち三六〇〇円が委託料として原告から受託協会に支払われる。)され、その保証期間は、保証証券差入後三年間となつており、また、保証証券の有効期間は、その発行日から二〇年間となつている。

オ 保証事故が発生した場合には、事業所等は、その事故の発生を知つた日から四八時間以内に、損害賠償請求書に所要の事項を記載の上、前記ウの手続きによつて受託協会から受領した他の書類を添付して、これを受託協会に送付することになつている。

カ 右損害賠償の請求を受けた受託協会は、興信所に依頼するなどして、事実関係を確認して上で、損害金額を確定するほか、被保証人から委任状(代払いに関する受託協会と被保証人との公正証書作成のためのもの)及び被保証人の印鑑登録証明書を徴することになつている。

キ 損害賠償金の代払いの措置を受けた被保証人は、右代払い金に相当する金員を受託協会に弁済することとなつている。

2  本件各更正の適法性

本件各事業年度の所得金額は以下のとおりであり、本件各更正はいずれも右各金額の範囲内でされたものであるから適法である。

(一) 昭和五四年三月期

(1) 原告の昭和五四年三月期の所得金額は、次表のとおりである。

〈省略〉

(△はマイナスを示す。以下同じ)

(2) 右表の内容、次のおりである。

ア 申告所得金額 △一億一一二五万五九二一円

原告の昭和五四年三月期の法人税確定申告書に記載されていた欠損金額である。

イ 資格取得金の収益計上もれ 一億八三三八万〇四〇〇円

(ア) 原告は、当期において新たに原告との間で総代理店等の権利の契約をした者から合計一億九三〇三万二〇〇〇円の資格取得金を受領した。

(イ) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、右資格取得金一億九三〇三万二〇〇〇円のうち二〇分の一相当額である九六五万一六〇〇円を当期の収益の額に計上したが、残額一億八三三八万〇四〇〇円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(ウ) しかしながら、前記1の原告の事業の概要で述べた事実及び原告が作成している業務約款〔1〕の第二条〈1〉によれば、「身元保証事業を全国信用身元保証協会の公認を受け権利(資格)の契約書、業務約款、業務指導要項を基本として営む者は、資格審査を経て、資格、営業権、役務、業務、商標、著作の使用権)を得ることができる。」とされ、同条〈2〉によれば、「資格取得金は二〇年間の前項資格の取得金である。」と明記されていることから、資格取得金が原告の総代理店等となるための資格を付与したことの対価であることは明白であり、また、業務約款二の第二条によれば、原告が資格取得金を返還することを要しないものであるから、総代理店等の権利の契約を締結した日の属する事業年度において、その全額を収益の額に計上するのが相当である。

(エ) よつて、原告が当期中に資格取得金として受領した金額のうち、当期の収益の額に計上しなかつた一億八三三八万〇四〇〇円を所得金額に加算する。

ウ 入会保証料の収益計上もれ 四九万九三二〇円

(ア) 原告は、原告の会員となつて受託協会から身元保証を受けようとする者との間において入会契約を締結し、当期中において合計五二万五六〇〇円の入会保証料を受領した。

(イ) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、右入会保証料五二万五六〇〇円のうち二〇分の一相当額である二万六二八〇円を当期の収益の額に計上したが、残額四九万九三二〇円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(ウ) しかしながら、入会保証料は、受託協会から身元保証を受けようとする者が原告の会員となるために支払う金員であると認められ、それは会員たる地位を取得するための対価であつて、その性格上返還不要のものであるから、会員との入会契約締結日の属する事業年度においてその全額を収益の額に計上するのが相当である。

なお、原告は、受託協会との間で保証委託契約を締結し、身元保証を求める会員を募集して入会保証料を受領した際に、一定の委託料を受託協会に支払つて身元保証業務を行わせているところ、原告は、右委託料をその支払時に損金として一括計上しているから、入会保証料を会員との入会契約時に収益として一括計上することによつて費用と収益が対応するのである。

(エ) よつて、原告が当期中に入会保証料として受領した金額のうち、当期の収益の額に計上しなかつた四九万九三二〇円を所得金額に加算する。

エ 前期資格取得金の当期収益計上額の認容 一七八万八八五〇

(ア) 原告は、昭和五二年四月一日から昭和五三年三月三一日までの事業年度(以下「昭和五三年三月期」という。)において、前期イ(ア)、(イ)と同様に、昭和五三年三月期中に新たに原告との間で総代理店等の権利の契約を締結した者から合計三五七七万七〇〇〇円の資格取得金を受領し、このうち、二〇分の一相当額である一七八万八八五〇円を昭和五三年三月期の収益の額に計上し、残額三三九八万八一五〇円については、「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して収益の額に計上しなかつた。そして、当期の法人税確定申告に当たり、右未経過経費勘定に計上した三三九八万八一五〇円のうちの一七八万八八五〇円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右資格取得金三三九八万八一五〇円は、前記イ(ウ)の理由からその全額を昭和五三年三月期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右一七八万八八五〇円を所得金額から減算する。

オ 繰越欠損金の損金算入額 七〇八三万四九四九円

原告は、青色申告法人であるから、昭和五〇年七月二八日から昭和五一年三月三一日までの事業年度の繰越欠損金一五六一万七五一三円、昭和五一年四月一日から昭和五二年三月三一日までの事業年度の繰越欠損金二九九五万四八七六円及び昭和五三年三月期の繰越欠損金三四九五万五七三九円の合計金額八〇五二万八一二八円のうち七〇八三万四九四九円を当期の損金として認容する。

カ 課税所得金額 〇円

以上によれば、当期の課税所得金額は、〇円となる。

(一) 昭和五五年三月期

(1) 原告の昭和五五年三月期の所得金額は、次表のとおりである。

〈省略〉

(2) 右表の内容は、次のとおりである。

ア 申告所得金額 △ 二億三九八六万六三〇七円

原告の昭和五五年三月期の法人税確定申告書に記載されていた欠損金額である。

イ 資格取得金の収益計上もれ 三億三九一九万四七四五円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、前期と同様に、当期中に受領した資格取得金三億五七〇四万七一〇〇円のうち二〇分の一相当額である一七八五万二三五五円を当期の収益の額に計上したが、残額三億三九一九万四七四五円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右資格取得金三億三九一九万四七四五円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

ウ 入会保証料の収益計上もれ 二一七八万五九一三円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、前期と同様に、当期中に受領した入会保証料二二九三万二五四〇円のうち二〇分の一の相当額である一一四万六六二七円を当期の収益の額に計上したが、残額二一七八万五九一三円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右入会保証料二一七八万五九一三円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

エ 交際費等の損金不算入額 一一一万〇八二三円

原告は、当期において五一二万二八四二円の交際費等を支出したとして確定申告をしたが、別表13のとおり租税特別措置法六二条一項の規定を適用して算出した右金額に係る交際費等の損金不算入額一一一万〇八二三円を所得金額に加算していないので、右金額を所得金額に加算する。

オ 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容 一一四四万〇四五〇円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期及び昭和五四年三月期において受領し、未経過経費勘定に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九六五万一六〇〇円の合計一一四四万〇四五〇円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右資格取得金一一四四万〇四五〇円は、前記(一)(2)イ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右一一四四万〇四五〇円を所得金額から減算する。

カ 前期入会保証料の当期収益計上額の認容 二万六二八〇円

(ア) 原告は、前記(一)(2)ウ(イ)で述べたとおり、昭和五四年三月期において入会保証料四九万九三二〇円を未経過経費勘定に計上し、昭和五四年三月期の収益の額に計上しなかつたが、当期の法人税確定申告に当たり、右未経過経費勘定に計上した金額のうち二万六二八〇円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右入会保証料二万六二八〇円は、前記(一)(2)ウ(ウ)の理由から昭和五四年三月期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右二万六二八〇円を所得金額から減算する。

キ 繰越欠損金の損金算入額 九六九万三一七九円

原告は、青色申告法人であるから、昭和五四年三月期の繰越欠損金残高九六九万三一七九円を当期の損金として認容する。

ク 課税所得金額 一億〇一〇六万五二六五円

以上によれば、当期の課税所得金額は一億〇〇六六万五二六五円となる。

(三) 昭和五六年三月期

(1) 原告の昭和五六年三月期の所得金額は、次表のとおりである。

〈省略〉

(2) 右表の内容は、次のとおりである。

ア 申告所得金額 △一億一一一〇万九六五八円

原告の昭和五六年三月期の法人税確定申告書に記載されていた欠損金額である。

イ 資格取得金の収益計上もれ 一億八一六六万五八五六円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、前期までと同様に、当期中に受領した資格取得金一億九一二二万七二一六円のうち二〇分の一相当額である九五六万一三六〇円を当期の収益の額に計上したが、残額一億八一六六万五八五六円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右資格取得金一億八一六六万五八五六円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

ウ 入会保証料の収益計上もれ 一六六三万〇四七六円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、前期までと同様に、当期中に受領した入会保証料一七五〇万五七六四円のうち二〇分の一相当額である八七万五二八八円を当期の収益の額に計上したが、残額一六六三万〇四七六円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右入会保証料一六六三万〇四七六円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

エ 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容 二九二九万二八〇五円

(ア) 原告は当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五五年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九六五万一六〇〇円、昭和五五年三月期分として一七八五万二三五五円の合計二九二九万二八〇五円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右資格取得金二九二九万二八〇五円は、前記(一)(2)イ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右二九二九万二八〇五円を所得金額から減算する。

オ 前期以前入会保証料の当期収益計上額の認容 一一七万二九〇七円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期において受領し、未経過経費勘定に計上した入会保証料のうち、昭和五四年三月期分として二万六二八〇円、昭和五五年三月期分として一一四万六六二七円の合計一一七万二九〇二円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右入会保証料一一七万二九〇七円は、前記(一)(2)ウ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右一一七万二九〇七円を所得金額から減算する。

カ 支払指導料の認容 六六七五万三二二三円

(ア) 原告は、旧総代理店等が新規に総代理店等となるべき者を募集し、その応募者と原告との間に総代理店等となる契約を締結させたことに基因して、右募集をした旧総代理店等に対して指導料(以下「支払指導料」という。)として合計七〇二六万六五五〇円を支払つた。

(イ) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、右支払指導料のうち二〇分の一相当額である三五一万三三二七円を当期の損金の額に計上したが、残額六六七五万三二二三円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(ウ) しかしながら、右支払指導料は、旧総代理店等の募集に応募し新規に総代理店等となつた者から原告に対し、資格取得金の支払があつたことにより、原告が旧総代理店等に支払うべきことが業務約款及び契約書等で明らかにされているものであり、その実質は、資格取得金の取次ぎに係る手数料と認められるから、新規総代理店等から原告に対し資格取得金の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものである。

(エ) よつて、原告が当期中に支払つた支払指導料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた六六七五万三二二三円を所得金額から減算する。

キ 支払入会手数料の認容 八一一万九二二六円

(ア) 原告は、総代理店等が受託協会から身元保証を受けるため原告の会員となる者を募集し、その応募者と原告との間に会員入会契約を締結させた際に原告から右募集をした総代理店等に支払われる入会手数料(以下「支払入会手数料」という。)として合計八五四万一二九〇円を当期中に支払つた。

(イ) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、右支払入会手数料のうち二〇分の一相当額である四二万二〇六四円を当期の損金の額に計上したが、残額八一一万九二二六円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(ウ) しかしながら、右支払入会手数料は、会員から原告に対し入会保証料の支払があつたことにより原告が総代理店等に支払うべきことが業務約款及び契約書等で明らかにされているものであり、その実質は、入会保証料の取次ぎに係る手数料と認められるから、会員から原告に対し入会保証料の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものである。

(エ) よつて、原告が当期中に支払つた支払入会手数料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた八一一万九二二六円を所得金額から減算する。

ク 課税所得金額 △一八一五万一四八七円

以上によれば、当期の欠損金額は一八一五万一四八七円となる。

(四) 昭和五七年三月期

(1) 原告の昭和五七年三月期の所得金額は、次表のとおりである。

〈省略〉

(2) 右表の内容は、次のとおりである。

ア 申告所得金額 △四〇一六万五五四二円

原告の昭和五七年三月期の法人税修正申告書に記載されていた欠損金額である。

イ 資格取得金等の収益計上もれ 二億六八六〇万七一八〇円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、当期中に受領した資格取得金二億八二七四万四四〇〇円のうち二〇分の一相当額である一四一三万七二二〇円を当期の収益の額に計上したが、残額二億六八六〇万七一八〇円については「前受契約金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら当期の収益の額に計上しなかつた右資格取得金二億六八六〇万七一八〇円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

ウ 入会保証料の収益計上もれ 三三〇八万〇一五四円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、当期中に受領した入会保証料三四八二万一二一四円のうち二〇分の一相当額である一七四万一〇六〇円を当期の収益の額に計上したが、残額三三〇八万〇一五四円については「前受入会保証金」(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右入会保証料三三〇八万〇一五四円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

エ 前期以前支払指導料の当期損金計上額の否認 一三〇七万九六四八円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において支払つた支払指導料の金額のうち、次表のとおりの金額を当期の損金の額に計上した。

〈省略〉

(イ) しかしながら、前期(三)(2)カ(ウ)で述べたとおり、右支払指導料は新規総代理店等から原告に対し資格取得金の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものであるから、当期の損金の額に計上した右一三〇七万九六四八円の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

オ 前期以前支払入会手数料の当期損金計上額の否認 九〇万二一八七円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において支払つた支払入会手数料の金額のうち、次表のとおりの金額を当期の損金の額に計上した。

〈省略〉

(イ) しかしながら、前記(三)(2)キ(ウ)で述べたとおり、右支払入会手数料は会員から原告に対し入会保証料の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものであるから、当期の損金の額に計上した右九〇万二一八七円の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

カ 道府県民税の損金計上額の否認 一万円

原告は、道府県民税の額一万円を損金の額に算入して、当期の法人税修正申告書を提出していたが、右金額は、法人税法上損金の額に算入しないこととされている(同法三八条二項三号参照)から、右金額の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

キ 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容 四一一一万四九六九円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九八九万〇四八八円、昭和五五年三月期分として一八九九万八九八二円、昭和五六年三月期として一〇四三万六六四九円の合計四一一一万四九六九円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右資格取得金四一一一万四九六九円は、前期(一)(2)イ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右四一一一万四九六九円を所得金額から減算する。

ク 前期以前入会保証料の当期収益計上額の認容 一八〇万四三七六円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定に計上していた入会保証料のうち、昭和五四年三月期分として二一一〇円、昭和五五年三月期分として九四万八一三七円、昭和五六年三月期分として八五万四一二九円の合計一八〇万四三七六円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右入会保証料一一七万二九〇七円は、前期(一)(2)ウ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右一八〇万四三七六円を所得金額から減算する。

ケ 支払指導料の認容 八八五八万二五五〇円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、前期と同様に、当期中に支払つた支払指導料九三二四万四七九〇円のうち二〇分の一の相当額である四六六万二二四〇円を当期の損金の額に計上したが、残額八八五八万二五五〇円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、右支払指導料は、前期(三)(2)カ(ウ)の理由からその金額が当期の損金となるものであるから、原告が当期中に支払つた支払指導料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた八八五八万二五五〇円を所得金額から減算する。

コ 支払入会手数料の認容 一五四三万六六一一円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、前期と同様に、当期中に支払つた支払入会手数料一六二四万九〇六四円のうち二〇分の一相当額である八一万二四五三円を当期の損金の各に計上したが、残額一五四三万六六一一円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、右支払手数料は、前記(三)(2)キ(ウ)の理由からその全額が当期の損金となるものであるから、原告が当期中に支払つた支払入会手数料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた一五四三万六六一一円を所得金額から減算する。

サ 繰越欠損金の損金算入額 一八一五万一四八七円

原告は、青色申告法人であるから、昭和五六年三月期の繰越欠損金一八一五万一四八七円を当期の損金の額として所得金額から減算する。

シ 課税所得金額 一億一〇四二万三六三四円

以上によれば、当期の課税所得金額は一億一〇四二万三六三四円となる。

(五) 昭和五八年三月期

(1) 原告の昭和五八年三月期の所得金額は、次表のとおりである。

〈省略〉

(2) 右表の内容は、次のとおりである。

ア 申告所得金額 △ 九八九〇万六九五三円

原告の昭和五八年三月期の法人税修正申告書に記載されていた欠損金額である。

イ 資格取得金の収益計上もれ 七億二三一九万六〇〇三円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、前期と同様に、当期中に受領した資格取得金七億六一二五万八九五〇円のうち二〇分の一相当額である三八〇六万二九四七円を当期の収益の額に計上したが、残額七億二三一九万六〇〇三円については「前受契約金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右資格取得金七億二三一九万六〇〇三円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

ウ 入会保証料の収益計上もれ 九五六万五五八六円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、前期と同様に、当期中に受領した入会保証料一〇〇六万九〇三八円のうち二〇分の一相当額である五〇万三四五二円を当期の収益の額に計上したが、残額九五六万五五八六円については「前受入(一)保証金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右入会保証料九五六万五五八六円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

エ 前期以前支払指導料の当期損金計上額の否認 一七七四万一八八八円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五七年三月期までの各事業年度において支払つた支払指導料の金額のうち、次表のとおりの金額を当期の損金の額に計上した。

〈省略〉

(イ) しかしながら、前記(三)(2)カ(ウ)で述べたとおり、右支払指導料は新規総代理店等から原告に対し資格取得金の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものであるから、当期の損金の額に計上した右一七七四万一八八八八円の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

オ 前期以前支払入会手数料の当期損金計上額の否認 一七一万四六四〇円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五七年三月期までの各事業年度において支払つた支払入会手数料の金額のうち、次表のとおりの金額を当期の損金の額に計上した。

〈省略〉

(イ) しかしながら、前記(三)(2)キ(ウ)で述べたとおり、右支払入会手数料は会員から原告に対し入会保証料の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものであるから、当期の損金の額に計上した右一七一万四六四〇円の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

カ 道府県民税の損金計上額の否認 一万円

原告は、道府県民税の額一万円を損金の額に算入して、当期の法人税修正申告書を提出していたが、右金額は、法人税法上損金の額に算入しないこととされている(同法三八条二項三号参照)から、右金額の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

キ 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容 五五二五万二一八九円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五七年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定等に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九八九万〇四八八円、昭和五五年三月期分として一八九九万八九八二円、昭和五六年三月期分として一〇四三万六六四九円、昭和五七年三月期分として一四一三万七二二〇円の合計五五二五万二一八九円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右資格取得金五五二五万二一八九円は、前記(一)(2)イ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右五五二五万二一八九円を所得金額から減算する。

ク 前期以前入会保証料の当期収益計上額の認容 三五四万五四三六円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五七年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定等に計上した入会保証料のうち、昭和五四年三月期分として二一一〇円、昭和五五年三月期分として九四万八一三七円、昭和五六年三月期分として八五万四一二九円、昭和五七年三月期分として一七四万一〇六〇円の合計三五四万五四三六円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右入会保証料三五四万五四三六円は、前記(一)(2)ウ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右三五四万五四三六円を所得金額から減算する。

ケ 支払指導料の認容 二億六五五一万一一三〇円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五六年三月期及び昭和五七年三月期と同様に、当期中に支払つた支払指導料二億七九四八万五四〇〇円のうち二〇分の一相当額である一三九七万四二七〇円を当期の損金の額に計上したが、残額二億六五五一万一一三〇円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、右支払指導料は、前期(三)(2)カ(ウ)の理由からその全額が当期の損金となるものであるから、原告が当期中に支払つた支払手数料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた二億六五五一万一一三〇円を所得金額から減算する。

コ 支払入会手数料の認容 四七八万七二九一円

(ア) 原告は、当期の法人税修正申告に当たり、昭和五六年三月期及び昭和五七年三月期と同様に、当期中に支払つた支払入会手数料五〇三万九二五四円のうち二〇分の一相当額である二五万一九六三円を当期の損金の額に計上したが、残額四七八万七二九一円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、右支払入会手数料は、前期(三)(2)キ(ウ)の理由からその全額が当期の損金となるものであるから、原告が当期中に支払つた支払入会手数料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた四七八万七二九一円を所得金額から減算する。

サ 事業税の認定損 一二九三万五七六〇円

昭和五七年三月期に係る更正により納付すべきこととなる事業税の額一二九三万五七六〇円を当期の損金の額として所得金額かち減算する。

シ 課税所得金額 三億一一二八万九三五八円

以上によれば、当期の課税所得金額は三億一一二八万九三五八円となる。

(六) 昭和五九年三月期

(1) 原告の昭和五九年三月期の所得金額は、次表のとおりである。

〈省略〉

(2) 右表の内容は、次のとおりである。

ア 申告所得金額 △ 一億三九九〇万九〇二二円

原告の昭和五九年三月期の法人税確定申告書に記載されていた欠損金額である。

イ 資格取得金の収益計上もれ 一五億八一八六万四〇六六円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五七年三月期及び昭和五八年三月期と同様に、当期中受領した資格取得金一六億七二一八万八四〇〇円のうち二〇分の一相当額を超える九〇三二万四三三四円を当期の収益の額に計上したが、残額一五億八一八六万四〇六六円については「前受契約金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右資格取得金一五億八一八六万四〇六六円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

ウ 入会保証料の収益計上もれ 一三二〇万一八三五円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五七年三月期及び昭和五八年三月期と同様に、当期中に受領した入会保証料一四〇三万八三八九円のうち二〇分の一相当を額超える八三万六五五四円を当期の収益の額に計上したが、残額一三二〇万一八三五円については「前受入会保証金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、当期の収益の額に計上しなかつた右入会保証料一三二〇万一八三五円は、昭和五四年三月期について述べたと同様の理由により、当期の収益の額に計上すべきものであるから、右金額を所得金額に加算する。

エ 前期以前支払指導料の当期損金計上額の否認 三一九三万六〇九七円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において支払つた支払指導料の金額のうち、次表のとおりの金額を当期の損金の額に計上した。

〈省略〉

(イ) しかしながら、前記(三)(2)カ(ウ)で述べたとおり、右支払指導料は新規総代理店等から原告に対し資格取得金の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものであるから、当期の損金の額に計上した右三一九三万六〇九七円の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

オ 前期以前支払入会手数料の当期損金計上額の否認 一九六万五五四八円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五五年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において支払つた支払入会手数料の金額のうち、次表のとおりの金額を当期の損金の額に計上した。

〈省略〉

(イ) しかしながら、前記(三)(2)キ(ウ)で述べたとおり、右支払入会手数料は会員から原告に対し入会保証料の支払があつた日の属する事業年度の損金となるものであるから、当期の損金の額に計上した右一九六万五五四八円の損金算入を否認し、所得金額に加算する。

カ 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容 九三一八万〇一一六円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において受領した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九八九万〇四八八円、昭和五五年三月期分として一八九九万八九八二円、昭和五六年三月期分として一〇四三万六六四九円、昭和五七年三月期分として一四〇〇万二二〇〇円、昭和五八年三月期分として三八〇六万二九四七円の合計九三一八万〇一一六円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右資格取得金九三一八万〇一一六円は、前記(一)(2)イ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右九三一八万〇一一六円を所得金額から減算する。

キ 前期以前入会保証料の当期収益計上額の認容 四〇四万六七七八円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五五年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において受領した入会保証料のうち、昭和五五年三月期分として九四万八一三七円、昭和五六年三月期分として八五万四一二九円、昭和五七年三月期分として一七四万一〇六〇円、昭和五八年三月期分として五〇万三四五二円の合計四〇四万六七七八円を当期の収益の額に計上した。

(イ) しかしながら、右入会保証料四〇四万六七七八円は、前記(一)(2)ウ(ウ)の理由から右各期の収益の額に計上すべきものであるから、当期の収益の額に計上した右四〇四万六七七八円を所得金額から減算する。

ク 支払指導料の認容 六億六一八九万五八七五円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五六年三月期から昭和五八年三月期までと同様に、当期中に支払つた支払指導料六億九六七三万二五〇〇円のうち二〇分の一相当額である三四八三万六六二五円を当期の損金の額に計上したが、残額六億六一八九万五八七五円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、右支払指導料は、前記(三)(2)カ(ウ)の理由からその全額が当期の損金となるものであるから、原告が当期中に支払つた支払手数料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた六億六一八九万五八七五円を所得金額から減算する。

ケ 支払入会手数料の認容 一八万七四一六円

(ア) 原告は、当期の法人税確定申告に当たり、昭和五六年三月期から昭和五八年三月期までと同様に、当期中に支払つた支払入会手数料一九万七二八〇円のうち二〇分の一相当額である九八六四円を当期の損金の額に計上したが、残額一八万七四一六円を当期の損金の額に計上しなかつた。

(イ) しかしながら、 右支払入会手数料は、前記(三)(2)キ(ウ)の理由からその全額が当期の損金となるものであるから、原告が当期中に支払つた支払入会手数料のうち、当期の損金の額に計上しなかつた一八万七四一六円を所得金額から減算ふる。

コ 事業税の認定損 三七〇三万九六八〇円

昭和五八年三月期に係る更正により納付すべきこととなる事業税の額三七〇三万九六八〇円を当期の損金の額として所得金額から減算する。

サ 課税所得金額 六億九二七〇万八六五九円

以上によれば、当期の課税所得金額は六億九二七〇万八六五九円となる。

3  本件各決定の適法性

以上のとおり、本件各更正は適法であるところ、昭和五五年三月期、昭和五七年三月期及び昭和五八年三月期に係る各過少申告加算税の賦課決定は、右各期の更正により納付すべき法人税額に一〇〇分の五を乗じて計算した金額を、昭和五九年三月期に係る過少申告加算税の賦課決定は、同期の更正により納付すべき法人税額に一〇〇分の五を乗じた金額と、右法人税額のうち五〇万円を超える部分に相当する金額に一〇〇分の五を乗じた金額の合計額をそれぞれ過少申告加算税の額として賦課決定したものであるから、本件各決定は適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1について

(一)は認める。

(二)のうち、保証証券を一万二〇〇〇円で購入するとの点は否認するが、その余の事実は認める。保証証券そのものが売買の対象となつているものではない。

2  同2について

(一) 冒頭の主張は争う。

(二) (一)について

(1) (1)について

申告所得金額については認めるが、その余は争う。

(2) (2)について

アは認める。

イのうち、(ア)及び(イ)は認める。(ウ)のち、業務約款〔1〕に被告主張の記載があることは認めるが、その余は争う。

ウのうち、(ア)及び(イ)は認めるが、(ウ)及び(エ)は争う。エのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

オのうち、原告が青色申告法人であること及び繰越欠損金の額が被告主張のとおりであることは認めるが、その余は争う。

カは争う。

(三) (二)について

(1) (1)について

申告所得金額については認めるが、その余は争う。

(2) (2)について

アは認める。

イのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ウのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

エのうち、原告が当期において五一二万二八四二円の交際費等を支出したとして確定申告をしたことは認めるが、その余は争う。

オのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

カのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

キのうち、原告が青色申告法人であることは認めるが、その余は争う。

クは争う。

(四) (三)について

(1) (1)について

申告所得金額については認めるが、その余は争う。

(2) (2)について

アは認める。

イのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ウのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

エのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

オのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

カのうち、(ア)及び(イ)は認める。(ウ)の事実は認めるが、主張は争う。(エ)は争う。

キのうち、(ア)及び(イ)は認める。(ウ)の事実は認めるが、主張は争う。(エ)は争う。

クは争う。

(五) (四)について

(1) (1)について

申告所得金額及び道府県民税の損金計上額の否認については認めるが、その余は争う。

(2) (2)について

アは認める。

イのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ウのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

エのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

オのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

カは認める。

キのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

クのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ケのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

コのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

サのうち、原告が青色申告法人であることは認めるが、その余は争う。

シは争う。

(六) (五)について

(1) (1)について

申告所得金額及び道府県民税の損金計上額の否認については認めるが、その余は争う。

(2) (2)について

アは認める。

イのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ウのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

エのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

オのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

カは認める。

キのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

クのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ケのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

コのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

サ及びシは争う。

(七) (六)について

(1) (1)について

申告所得金額については認めるが、その余は争う。

(2) (2)について

アは認める。

イのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ウのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

エのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

オのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

カのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

キのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

クのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

ケのうち、(ア)は認めるが、(イ)は争う。

コ及びサは争う。

3  同3は争う。

五  原告の反論

1  資格取得金等の計上時期について

(一) 資格取得金の収益計上時期

資格取得金は、次の理由により、その契約期間である二〇年の各期においてその二〇分の一相当額を収益に計上すべきものである。

(1) 資格取得金は、原告の総代理店等になろうとする者が、原告の総代理店等となる権利(資格)の契約を締結する当たり、原告に支払う金員である。

ところで、原告は、総代理店等がその契約締結後二〇年間にわたり業務を遂行し利益を得るよう総代理店等に対して保証業務に関して指導し、財貨等を提供し、また新たな企画を考察の上、等しく利益を享受させる義務を負つている。これらに要する経費は一定割合を原告が負担するものであり、総代理店等はその余を負担するにすぎない。原告が提供する役務の具体的内容は、大略次のとおりである。

〈1〉 保証義務に関する指導

Ⅰ 保証に関する知識の授与

Ⅱ 営業上のノウハウの授与

〈2〉 財貨等の提供

Ⅰ 各種保証に関する判例、実例等の資料の提供

Ⅱ 新保証証券の提供

Ⅲ 書籍及び文庫の提供

Ⅳ ビデオフイルム及びカセツトテープの提供

Ⅴ 工業所有権、著作権等の使用の許諾

Ⅵ 広告宣伝の実施

原告は、かかる役務の提供を現に遂行しており、このために多大な経費を費やしているが、原告が二〇年間にわたり提供する役務に対応する収益は、収受した資格取得金の中から年々繰り入れられるものであつてそれ以外にはない。

総代理店等が取得する資格の主要な一部である無体財産権を使用し得る地位についてみれば、使用許諾者に支払われる実施料、無体財産権を使用することに対する対価であつて、実施契約期間中これを使用する毎に発生する債務であり、ランニングコストとして一定期間毎に支払われるのが原則であるが、契約当初に一括支払われることも多く行われている。この場合、右定額実施料は、実施許諾の前対価を定額で表示する実施料で、契約期間全部につき定めることもあれば、その分割された各期間毎に定めることもあるが、いずれにせよそれが、使用する毎に発生する対価であることに違いない。これらは、次期の収益たるべきものであるから、後の使用部分についての右支払金は、前払実施料であることは当然のことである。

二〇年間にわたる役務提供の対価たる資格取得金を一括して受領するのは原告の事業が発展途上のものであり、相手方からの対価の回収が不可能若しくは著しく困難となる恐れがあるため、それをあらかじめ前払いをさせているにすぎない。

(2) 資格取得金は、総代理店等としての地位を取得し、その地位に基づいて二〇年間の役務提供を受けるための対価として相手から支払われるものであるから、原則として返還されない。しかし、契約違反の場合には、総代理店等の契約を解除できる旨の定めとなつており、現実にも資格取得金が絶対に返還されないものではない。

(3) 資格取得金は、総代理店等からすれば原告から役務提供を受ける二〇年間分の対価として支払うものてあるから、総代理店等はその役務の提供を受けていない部分に相当する金額は前払費用として会計処理すべきであり、現実に総代理店等ではそのように処理している。

(二) 支払指導料の損金計上時期

(1) 指導料は、総代理店等が新規に総代理店等を募集し、その応募者と原告との間に総代理店等となる契約を締結させた際に、原告から当該募集をした旧総代理店等に支払われる金員である。また、指導料の額は、新規総代理店等が支払う資格取得金の額に旧総代理店等が提供する役務の軽重により資格別に定められた四〇パーセントないし五五パーセントの一定割合を乗じて算出される。

(2) この場合、総代理店等は原告と共同して新規総代理店等に対して、二〇年間にわたり前記(一)(1)で述べたと同様の役務を提供する。旧総代理店等がこのために要する経費はすべて原告から指導料として支払を受けるものである。すなわち、指導料は、原告と共同して二〇年間にわたつて新規総代理店等に役務を提供するために原告から旧総代理店等に支払われるもので前払費用である。

(3) したがつて、指導料は、原告がそれを支払つた日の属する事業年度においてその全額が費用とはならず、その二〇分の一相当額が費用となるにすぎない。そして、残余の額については、右事業年度に続く一九年間にわたる各期においてその二〇分の一相当額ずつを費用配分し、損金に計上すべきものである。

なお、原告は、別表7及び8記載のとおり、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期については、支払手数料を支払つた日の属する事業年度においてその全額を損金に計上していたが、右処理は誤つてされたものである。

(三) 入会保証料の収益計上時期

入会保証料は、次の理由により、その契約期間である二〇年の各期においてその二〇分の一相当額を収益に計上すべきものである。

(1) 入会保証料は、原告の会員となつて受託協会の保証を受けようとする者が、原告との間で会員となる入会契約を締結するに当たり原告に支払う金員である。

ところで、原告は、会員に対し、契約締結後二〇年間はいつでも保証に関する相談の一切に応じる義務を負うが、原告が二〇年間にわたり会員に提供する相談役務に対応する収益は、収受した入会保証料の中から年々繰り入れられるものであつてそれ以外にはない。

また、人的役務の提供による報酬を期間の経過に応じて収入する特約がある場合におけるその期間の経過に対応する報酬については、その特約によりその収入すべき事由が生じた日に収益を計上するとすること税務の通例であり、入会保証料もこの例外ではありえないのである。

(2) 入会保証料は、会員たる地位を取得し、その地位に基づいて二〇年間の相談役務の提供を受けるための対価として会員から支払を受けるものであるから、原則として返還されない。しかし、会員が受託協会の発行した保証証券の使用を企業及び学校等から拒否されたことによりその使用が不能となつた場合には入会保証料を返還している事例があるので、入会保証料は絶対に返還されないものではない。

(四) 支払入会手数料の損金計上時期

(1) 入会手数料は、総代理店等が会員を募集し、その応募者と原告との間に会員入会契約を締結させた際に、原告から当該募集をした総代理店等に支払われる金員である。また、入会手数料の額は、会員が支払う入会保証料の額に、総代理店等の規模に応じて、新規に入会させた場合には一五パーセントないし四五パーセント、既に入会している会員を継続させた場合には一三パーセントないし三五パーセントの一定割合を乗じて算出する。なお、入会保証料の額に乗ずる割合を異にするのは、総代理店等の規模によつて相談の質量が異なるためである。

(2) この場合、総代理店等は、原告と共同して契約締結後二〇年間にわたり、会員の身元保証に関する一切の相談(ただし、保証引受委託は含まない。)に応じる義務を負い、総代理店等のこれに要する経費は原告より入会手数料として支払われるものである。すなわち、入会手数料は、総代理店等が原告と共同して二〇年間にわたつて会員からの保証に関する一切の相談(ただし、保証引受委託は含まない。)に応じるために原告から総代理店等に支払われるもので、前払費用である。

(3) したがつて、入会手数料は、原告がそれを支払つた日の属する事業年度においては、その全額が費用とはならず、その二〇分の一相当額が費用となるにすきない。そして、残余の額については、右事業年度に続く一九年間にわたる各期においてその二〇分の一相当額を費用配分し、損金に計上すべきものである。

なお、原告は、別表7及び8記載のとおり、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期については、支払入会手数料を支払つた日の属する事業年度においてその全額を損金に計上していたが、右処理は誤つてされたものである。

2  信義則の適用について

(一) 原告は、昭和五三年六月ころ、神田税務署長から昭和五三年三月期の法人税の調査を受けたが、その際主として問題となつたのは原告の収受する資格取得金を各期においてその二〇分の一相当額ずつを収益に計上していく原告の経理処理の是非であつた。そこで、三か月にわたる調査期間中原告代表者は神田税務署に何度か出向き、担当統括国税調査官らと右問題について意見交換をするなど種々検討を行つてきた。その結果、同年九月ころ神田税務署長から原告の経理処理は相当と認められる旨の通知を受けた。そこで、原告は、昭和五四年三月期についても同一の経理方法で計算したところにより法人税の確定申告書を提出したが、神田税務署長からはこれについて何らの連絡もなかつたので、昭和五五年三月期についても同様に処理した。ところが、昭和五五年六月ころから、前記の調査官とは別の調査官により約一年間継続的に法人税の調査が行われ、調査終了後、神田税務署長は原告の意見を徴することなく、また修正申告書の提出の慫慂もしないで、昭和五六年六月三〇日付けで、突如一方的に、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期につき、既に相当と認めているはずの原告の経理方法が不適当なものであるとして更正をしたのである。

(二) 原告が昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期においても昭和五三年三月期と同一の計算基準によつて資格取得金の経理をしたのは、前記神田税務署長の是認の通知を信頼したからである。したがつて、当該通知及びその後の一連の事実行為は信義則にいう信頼の対象たる表示ないし行為に該当するものてある。

また、仮に、原告の採用している経理方法が合理性を欠く不適法なものであり、神田税務署長にそれを是正する機会が与えられるとしても、それは原告の信頼の利益を著しく害さない範囲において許されるべきである。しかるに、神田税務署長は、既に行つた是認の通知及びその後の一連の事実行為が誤りであつた旨を原告に告げ、以後の事業年度につきしかるべき更正をするならともかく、突然過年度にさかのぼつて更正をしたのである。その結果、原告は今までの信頼を裏切られたはかりではなく、多額の税が課され不測の損害を被つたのである。

(三) 以上のことから、本件各更正は公権力の行使として適法なものではない。

六  原告の反論に対する認否

1  原告の反論1について

(一) (一)(1)のうち、資格取得金が原告の総代理店等になろうとする者が原告の総代理店等となる権利(資格)の契約を締結するに当たり原告に支払う金員であることは認めるが、その余は争う。なお、原告と総代理店等との間において何らかの無体財産権に係る実施料を支払う旨の契約が取り交わされたと認めるべき事実は存しないのであるから、資格取得金の主要な一部が無体財産権の使用に係る実施料であると認定すべき根拠はない。(2)及び(3)は争う。

(二) (二)(1)は認めるが、(2)及び(3)は争う。

(三) (三)(1)のうち、入会保証料が原告の会員となつて受託協会の保証を受けようとする者が原告との間で会員となる入会契約を締結するに当たり原告に支払う金員であることは認めるが、その余は争う。(2)は争う。

(四) (四)(1)のうち、入会保証料の額に乗ずる割合を異にするのが総代理店等の規模によつて相談の質量が異なるためであることは争うが、その余は認める。(2)及び(3)は争う。

2  同2について

(一) (一)のうち、神田税務署長による調査期間中原告代表者が神田税務署に出向き、担当統括国税調査官らと原告の経理処理の問題について意見交換をするなど種々検討を行つたとの点及び神田税務署長が原告の資格取得金に関する経理処理を相当とする旨の通知をしたとの点は否認し、その余は争う。被告が原告の昭和五四年三月期の法人税確定申告について何ら連絡をしなかつたとしても、連絡をしなければならないとする法令上の規定はないのであつて、かかる行為をもつて信義則にいう信頼の対象たる表示に該当するものと解することはできない。また、仮に神田税務署長あるいは被告が原告の意見を徴することなく、修正申告の提出の慫慂もしないで更正をしたとしても、更正を行うに当たり、その申告に係る課税標準等又は税額等が調査したところと異なるときは、その調査により更正することができる(国税通則法二四条)のであるから、このことをもつて信義則に違背するものということはできない。

(二) (二)及び(三)は争う。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の証書目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1及び3の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、本件各更正に原告の所得金額を過大に認定した違法があるかどうかについて検討する。

1  資格取得金等の計上時期について

被告は、資格取得金及び入会保証料はいずれも原告がその支払を受けた事業年度においてその全額を収益の額に計上すべきであり、支払指導料及び支払入会手数料はいずれも原告がその支払をした事業年度においてその全額を損金の額に計上すべき旨を主張するのに対して、原告は、資格取得金及び入会保証料はいずれも原告がその支払を受けた事業年度及びこれに続く一九事業年度においてその二〇分の一ずつを収益の額に計上すべきであり、支払指導料及び支払入会手数料はいずれも原告がその支払をした事業年度及びこれに続く一九事業年度においてその二〇分の一ずつを損金の額に計上すべき旨を主張するので、まずこの点について検討する。

(一)  被告の主張1(原告の事業の概要)のうち保証証券を一万二〇〇〇円で購入するとの点を除くその余の事実及び原告の業務約款〔1〕の第二条〈1〉によれば、「身元保証事業を全国信用身元保証協会の公認を受け権利(資格)の契約書、業務約款、業務指導要項を基本として営む者は、資格審査を経て、資格(営業権、役務、業務、商標、著作の使用権)を得ることができる。」とされ、同条〈2〉によれば、「資格取得金は二〇年間の前項資格の取得金である。」と明記されていることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証ないし第一七号証の各一、二、第一八号証ないし第二〇号証、第二三号証、第四三号証の一、二、第四四号証の二、三、第四五号証の一、二、乙第二〇号証、第二五号証の二及び第三七号証の一、原本の存在及びその成立に争いのない甲第二一号証、第二二号証、乙第六号証の二、第一八号証の二及び第二一号証、官公署作成部分については成立に争いがなく、その余の部分については原告代表者尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第七二号証、原告代表者尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲二五号証、第四〇号証、第六一号証、第七一号証及び第七三号証、原告代表者尋問の結果によつて原本の存在及びその成立を認めることができる甲第二四号証、第四一号証及び第四二号証の各一、二並びに第四四号証の一、証人渋谷三男の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第一号証及び第二号証、証人大原豊実の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第三号証ないし第五号証、第六号証の一及び第七号証ないし第九号証、証人鈴木徹の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第一〇号証、第一一号証、第三一号証及び第三二号証、証人谷口幸二の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第一二号証ないし第一五号証、証人石黒邦夫の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第二八号証の一、第二九号証、第三〇号証、第三五号証及び第三六号証の一、証人吉田良一の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第三四号証、弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる乙第一六号証、第一七号証、第一八号証の一、第二三号証、第二四号証、第二五号証の一、第二六号証、第二七号証の一及び第三三号証(乙第一八号証の一については原本の存在を含む。)原告代表者尋問の結果(ただし、後記採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。

(1) 原告の総代理店等となつた者は、二〇年間にわたつて、直接指導料、間接指導料、直接入会手数料、継続入会手数料及び間接入会手数料名目の金員の支払を受け得る地位を保持する。また、原告の会員となつた者は、二〇年間にわたつて保証証券を使用し得る地位を保持するが、保証証券の保証期間を超えて更に保証を受けることを希望する会員は、二〇年間の間であつても改めて当初と同額の入会保証料を原告に支払い、保証証券を入手しなければならない。なお、保証証券の種類によつて入会保証料の額が異なるのは、事故の発生率が考慮されたためである。

(2) 原告は、本件各事業年度を通じて、総代理店等を対象として新しい種類の保証証券の説明、総代理店等及び会員の募集方法等の教授、総代理店等及び会員の募集の督励等を内容とする研修会を年に数回ないし十数回開催していたが、研修会の内容に余り変化がない上、研修会に出席する費用は出席者負担であり、しかも、研修会の開催通知が総代理店等になつて半年ないし一年間程度しか来ないため、総代理店等となつた者のなかには右の研修会に全く出席しなかつたり、出席したとしても二、三回という者がほとんどであつた。また、右の研修会に出席しなかつた者が原告から研修会の模様を録画したビデオ・テープ、あるいはこれを録音したカセツト・テープの送付を受けるということはなかつた。

(3) 原告の作成した業務約款等には原告は二〇年間にわたつて総代理店等の指導等を行う旨記載されているが、実際には右の研修会を除いては原告あるいは旧総代理店等から指導を受けた新規総代理店等は少数の例外を除いてほとんどなく、旧総代理店等から指導を受けた者もその回数は数回程度であつた。また、総代理店等は、総代理店等あるいは会員を募集するために使用するパンフレツト等を原告から購入していたのであり、無償で財貨等の提供を受けることはほとんどなかつた。

(4) 原告の会員になつた者が総代理店等に対して保証に関する相談を行うということもほとんどなかつた。

(5) 原告から総代理店等に昭和五五年七月ころ送付された業務約款二には、総代理店等と原告の金銭の授受は、譲渡権利書(営業権)の取引代金であり、返還されない旨の記載がある。また、原告から総代理店等に交付される権利書には、本権利書は総代理店等の権利(資格)の契約であり、資格取得金を払い込んだ時に権利の効力が発生する旨の記載があり、総代理店等になろうとする者が原告に提出する審査と入会申込み書ないし権利取得申し込み書には「権利金(資格取得金)」との記載がある。

また、原告と総代理店等との間に契約書等には、総代理店等は総代理店等となろうとする者及び原告の会員となろうとする者を原告に取り次いだ場合には直接指導料及び直接入会手数料を、自己が原告に取り次いだ総代理店等が更に総代理店等となろうとする者及び原告の会員となろうとする者を原告に取り次いだ場合には間接指導料及び間接入会手数料をそれぞれ収入として取得できる旨記載されている。

(6) 契約期間の途中で営業を止めた総代理店等のなかには死亡した者等原告から資格取得金の一部の返還を受けた者もあつたが、原告に返還請求したが返還を受けられなかつた者あるいは最初から返還請求することを諦めている者が大部分である。

(7) 大多数の総代理店等は、資格取得金は総代理店等としての資格を取得するための対価であり、また、指導料名目の金員は総代理店等となろうとする者を原告に取り次いだことに対する仲介手数料であり、更に、入会手数料名目の金員は会員となろうとする者を原告に取り次いだことに対する仲介手数料であると認識している。

(8) 原告は、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期においては、原告が支払つた支払指導料及び支払入会手数料についてその支払の日が属する事業年度おいてその全額を損金の額に計上して確定申告をしていた。以上の事実を認めることができる。原告代表者尋問の結果中右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らして採用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(二)  右(一)の事実に基づいて、資格取得金等の計上時期について検討する。

(1) 資格取得金について

まず、資格取得金について検討するに、右(一)の事実によれば、資格取得金は、総代理店等になつて指導料ないし入会手数料という収入を得ようとする者が総代理店等の地位ないし権利を取得するための対価として原告に支払うものであるというべきである。

この点について、原告は、資格取得金は原告の総代理店等としての地位を取得し、その地位に基づいて二〇年間にわたつて保証業務についての指導、財貨等の提供を受けるための対価であると主張する。そして、原告代表者は、資格取得金は原告が二〇年間にわたつて総代理店等を指導するための経費であると供述し、前掲甲第一九号証ないし第二一号証及び第七二号証によれば、原告の作成した業務約款等にも同旨の記載があることが認められる。しかしながら、右(一)の事実によれば、総代理店等に対して行われる研修会を除いては総代理店等に対する指導等は行われておらず、また、無償での財貨等の提供も行われていないし、右の研修会は総代理店等の地位ないし権利を取得した者に対してその地位ないし権利の説明等をいわばサービスとして行うものであつて、資格取得金の支払と対価関係に立つものではないということができる上、原告代表者尋問の結果によれば、収入金額が異なるため総代理店等の種類によつて資格取得金の金額が異なつていることが認められるのであつて、これらの事情に鑑みると、資格取得金には原告の主張するような性質は含まれていないものというべきであり、原告代表者の前記供述及び業務約款等の前記記載は採用することができない。

なお、原告は、総代理店等が取得する資格の主要な一部は無体財産権を使用し得る地位であるところ、無体財産権を使用することの対価は使用する毎に発生するものであるから、資格取得金の中には前払実施料が含まれている旨を主張するところ、成立に争いのない甲第二六号証ないし第三二号証及び第三六号証ないし第三九号証、原本の存在及びその成立に争いのない甲第三四号証及び第三五号証、原告代表者尋問の結果によつて原本の存在及びその成立を認めることができる甲第三三号証並びに原告代表者尋問の結果によれば、原告代表者は多数の商標権及び著作権を所有し、原告にその使用を許諾していることが認められるが、総代理店等が右商標権及び著作権を使用していることを認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張はその前提において既に誤つているものというべきである。

したがつて、資格取得金は原告がその支払を受けた日の属する事業年度にその全額を収益として計上すべきものというべきである。

(2) 入会保証料について

次に、入会保証料について検討するに、右(一)の事実によれば、入会保証料は、原告の会員となるための対価として支払われるものであるが、その実質は受託協会の発行する保証証券を取得するための取得費たるものということができる。

この点について、原告は、入会保証料は二〇年間にわたつて保証に関する相談役務の提供を受けるための対価であると主張し、原告代表者は右主張に沿う供述をする。しかしながら、右(一)で認定したとおり、保証証券の保証期間を超えて更に保証を受けることを希望する会員は会員としての期間が残つていても改めて当初と同額の入会保証料を支払わなければならないし、入会保証料の額は自己の発生率を考慮して決定されるため保証証券の種類によつて異なつているのであり、また、原告代表者尋問の結果によれば、保証証券を複数必要とする場合には、その必要な枚数分の入会保証料を支払わなければならないことが認められるか、入会保証料が原告の主張するように二〇年間にわたつて保証に関する相談役務の提供を受けるための対価であるとするならば、右のような事態を説明することはできないといわざるを得ない上、原告代表者は保証に関していろいろな相談が寄せられる旨を供述するが、仮に原告に保証に関する相談が寄せられることがあるとしても、そのような相談が二〇年間にわたつて継続的に寄せられるということは到底考えられないのであつて、これらの事情に鑑みると、入会保証料は原告の主張するような性質を持つものではないというべきであり、原告代表者の前記供述は採用することができない。なお、成立に争いのない甲第六二号証及び原告代表者尋問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第七四号証によれば、原告の作成した身元保証申込書には原告の会員は二〇年間保証に関する相談を無償で受けることができる旨の記載があることが認められるが、二〇年間保証に関する相談を無償で受けられるからといつて必ずしもそのことが入会保証料と対価関係に立つものではないから、右事実も右認定を覆すに足りないものというべきである。

したがつて、入会保証料は原告がその支払を受けた日の属する事業年度においてその全額を収益として計上すべきである。

(3) 支払指導料について

更に、支払指導料について検討するに、右(一)の事実によれば、指導料は、総代理店等が総代理店等となろうとする者を原告に取り次いだことに基づいて総代理店等に支払われる手数料であるというべきである。

この点について、原告は、指導料は旧総代理店等が原告と共同して二〇年間にわたつて新規総代理店等に役務を提供するために支払われるものであると主張する。そして、原告代表者は右主張に沿う供述をし、前掲甲第一八号証及び第七二号証によれば、原告の作成した業務約款にも同旨の記載があることが認められる。しかしながら、右(一)の事実によれば、旧総代理店等は新規総代理店等に対してほとんど指導等の役務を提供していないというべきであるし、また、旧総代理店等が総代理店等となろうとする者を原告に取り次ぐ際には旧総代理店等と原告との契約期間は二〇年間に満たないはずであるから、旧総代理店等が原告と共同して二〇年間にわたつて新規総代理店等に役務を提供するということはありえない(この点に関して原告代表者は種々供述するが、右供述は趣旨が不明確であつて到底採用することができない。)のであつて、これらの事情に鑑みると、指導料は原告の主張するような性質をもつものではないというべきであり、原告代表者の前記供述及び業務約款の前記記載を採用することはできない。なお、成立に争いのない甲第四八号証ないし第五九号証によれば、原告は総代理店等に対して指導を促す書面を送付していることが認められるが、右事実も前記認定の事実に照らし右認定を覆すに足りないものというべきである。

したがつて、支払指導料は原告がその支払をした日の属する事業年度においてその全額を損金の額に計上すべきである。

(4) 支払入会手数料について

最後に、支払入会手数料について検討するに、右(一)の事実によれば、入会手数料は、総代理店等が原告の会員となろうとする者を原告に取り次いだことに基づいて総代理店等に支払われる手数料の性質をもつものであるというべきである。

この点について、原告は、総代理店等が原告と共同して二〇年間にわたつて会員からの保証に関する一切の相談に応じるため原告から支払われるものであると主張する。そして、原告代表者は右主張に沿う供述をし、前掲甲第二二号証によれば、原告の作成した業務指導要項〔2〕に同旨の記載があることが認められる。しかしながら、二〇年間もの長期間にわたつて保証に関する相談が総代理店等に寄せられるということは到底考えられないのであつて、現に、右(一)で認定したとおり、総代理店等が会員から保証に関して相談を受けることはほとんどなかつたのであり、また、指導料について判示したのと同様に、総代理店等が入会手数料の支払を受けたときには当該総代理店等と原告との間の契約期間は二〇年に満たないはずであるから、総代理店等が原告と共同して二〇年間にわたつて会員からの相談に応じるということはありえない(この点に関して原告代表者は種々供述するが、右供述は趣旨が不明確であつて到底採用することができない。)のであり、これらの事情に鑑みると、入会手数料は原告の主張するような性質をもつものではないというべきであり、原告代表者の前記供述及び業務指導要項の前記記載は採用することができない。

したがつて、支払入会手数料は原告がその支払をした日の属する事業年度においてその全額を損金の額に計上すべきである。

2  信義則の適用について

(一)  原告は、神田税務署長が昭和五三年六月ころ行つた調査の際に、主として原告が収受する資格取得金を各期においてその二〇分の一相当額ずつを収益に計上していく原告の経理処理の是非が問題とされ、神田税務署長は右経理処理を相当と認める旨の通知をし、原告が昭和五四年三月期について右と同様の経理処理をしたことについて何らの連絡も行わなかつたにもかかわらず、昭和五五年六月ころから行つた調査終了後、原告の意見を徴することなく、また修正申告書の提出を慫慂することなく、突如一方的に右経理処理を不適当なものであるとして本件各更正を行つたのであるが、神田税務署長が行つた右経理処理は相当と認められる旨の通知及びその後の一連の事実行為は信義則にいう信頼の対象たる表示ないし行為に該当するものであるから、本件各更正は信義則に反する旨を主張するので、この点について検討する。

税務署長が納税者のある経理処理を調査の対象とし、その調査の結果右経理処理を否認しなかつたとしても、その後の調査により前回の調査において把握した事実に誤りがあることが判明し、あるいは新たな事実を把握したような場合には、その調査の結果判明した事実関係に基づいて更正を行うことは何ら信義則に反するものではないと解すべきところ、原本の存在及びその成立に争いのない乙第一九号証の二、証人大原豊実の証言によつて真正に成立したものと認められる乙第一九号証の一及び原告代表者尋問の結果(ただし、後記採用しない部分を除く。)に弁論の全趣旨を併せると、〈1〉神田税務署長所部の山本弘治係官は昭和五三年七月末ないし同年八月初旬に原告の事務所も兼ねた原告代表者の自宅に一日ないし二日赴いて原告の昭和五三年三月期について税務調査を行つたこと、〈2〉右調査においては、原告が右事業年度に受領した資格取得金のうち二〇分の一相当額を収益に計上した経理処理の是非が主たる問題とされたこと、〈3〉山本係官は、原告のパンフレツト等に資格取得金は総代理店等を二〇年間にわたつて指導するための対価である旨の記載があり、また、原告代表者から総代理店等との間の契約が解除された場合には資格取得金のうち契約期間の残期間に対応する部分を返還している旨の説明がなされ、返還を証するものとして領収証、振込金受取書等の提示を受けたため、原告代表者の説明及び原告代表者が提出した資料を信用し、原告の右経理処理もやむを得ないと判断し、その結果右経理処理を否認する内容の変更は行われなかつたが、特段原告の右経理処理を相当と認める旨の通知はなされなかつたこと、〈4〉神田税務署長は、昭和五五年六月ころから約一年間にわたり原告の税務調査を行い、その結果昭和五三年の調査の際に把握した事実関係には誤りがあつたとして、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期について原告の採用した前記経理処理の否認を内容の一部とする更正を行い、被告も昭和五六年三月期ないし昭和五九年三月期について右と同内容の更正を行つたこと、以上の事実が認められる(原告代表者尋問の結果中右認定に反する部分は採用することができない。)のであつて、右認定の事実によれば、神田税務署長あるいは被告は、原告の経理処理を相当と認める旨の通知をしたことはないのみならず、新たになされた調査の結果得られた事実関係に基づいて本件各更正を行つたことは明らかであるから、本件各更正が信義則に反するものということはできない。また、新たな事実関係に基づいて更正を行う際に、納税者の意見を徴したり、修正申告書の提出を慫慂することが信義則上要求されていると解する根拠はない。

したがつて、原告の右主張は採用することができない。

(二)  また、原告は、原告の採用した前記経理処理が合理性を欠く不適法なものであり、神田税務署長にそれを是正する機会が与えられるとしても、神田税務署長は前記の是認の通知及び一連の事実行為が誤りであつた旨を原告に告げ、以後の事業年度についてしかるべき更正をすべき旨を主張するが、右主張は原告の独自の見解であつて採用することができない。

3  本件各事業年度の所得金額

(一)  昭和五四年三月期

(1) 被告の主張2(一)(2)のうち、ア(申告所得金額)については、当事者間に争いがない。

(2) 資格取得金の収益計上もれ

原告が当期において一億九三〇三万二〇〇〇円の資格取得金を受領したこと及び原告が当期の法人税確定申告に当たり、右資格取得金一億九三〇三万二〇〇〇円のうち二〇分の一相当額である九六五万一六〇〇円を当期の収益の額に計上したが、残額一億八三三八万〇四〇〇円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、資格取得金は原告が受領した日の属する事業年度においてその全額を収益の額に計上すべきであるから、資格取得金の収益計上もれの額は一億八三三八万〇四〇〇円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(3) 入会保証料の収益計上もれ

原告が当期において五二万五六〇〇円の入会保証料を受領したこと及び原告が当期の法人税確定申告に当たり、右入会保証料五二万五六〇〇円のうち二〇分の一相当額である二万六二八〇円を当期の収益の額に計上したが、残額四九万九三二〇円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、入会保証料は原告が受領した日の属する事業年度においてその全額を収益の額に計上すべきであるから、入会保証料の収益計上もれの額は四九万九三二〇円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(4) 前記資格取得金の当期収益計上額の認容

原告が昭和五三年三月期において三五七七万七〇〇〇円の資格取得金を受領し、このうち二〇分の一相当額である一七八万八八五〇円を同期の収益の額に計上し、残額三三九八万八一五〇円については、「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して収益の額に計上しなかつたこと及び原告が当期の法人税確定申告に当たり、右の未経過経費勘定に計上した三三九八万八一五〇円のうちの一七八万八八五〇円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、資格取得金は原告が受領した日の属する事業年度においてその全額を収益の額に計上すべきである。したがつて、原告が当期の収益の額に計上した一七八万八八五〇円を所得金額から減算すべきである。

(5) 繰越欠損金の損金算入額

原告が青色申告法人であること及び原告の昭和五〇年七月二八日から昭和五一年三月三一日までの事業年度の繰越欠損金が一五六一万七五一三円、昭和五一年四月一日から昭和五二年三月三一日まての事業年度の繰越欠損金が二九九五万四八七六円、昭和五三年三月期の繰越欠損金が三四九五万五七三九円であることについては、当事者間に争いがないところ、右(1)ないし(4)によれば、繰越欠損金を損金に算入しないとした場合の所得金額は七〇八三万四九四九円となるから、右繰越欠損金のうち右金額と同額を損金に算入すべきである。

(6) 課税所得金額

以上によれば、当期の課税所得金額は〇円となる。

(二)  昭和五五年三月期

(1) 被告の主張2(二)2のうち、ア(申告所得金額)については、当事者間に争いがない。

(2) 資格取得金の収益計上もれ

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に受領した資格取得金三億五七〇四万七一〇〇円のうち二〇分の一相当額である一七八五万二三五五円を当期の収益の額に計上したが、残額三億三九一九万四七四五円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、資格取得金の収益計上もれの額は三億三九一九万四七四五円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(3) 入会保証料の収益計上もれ

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に受領した入会保証料二二九三万二五四〇円のうち二〇分の一相当額である一一四万六六二七円を当期の収益の額に計上したが、残額二一七八万五九一三円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、入会保証料の収益計上もれの各は二一七八万五九一三円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(4) 交際費等の損金不算入額

原告が当期において五一二万二八四二円の交際費等を支出したとして確定申告をしたことについては、当事者間に争いがなく、右金額に係る交際費等の損金不算入額は別表13のとおり一一一万〇八二三円となるところ、前掲乙第二一号証によれば、原告は当期の法人税確定申告に当たり、右損金不算入額を所得金額に加算していないことが認められるので、右金額を所得金額に加算すべきである。

(5) 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期及び昭和五四年三月期において受領し、未経過経費勘定に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九六五万一六〇〇円の合計一一四四万〇四五〇円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(6) 前期入会保証料の当期収益計上額の認容

原告が前期において入会保証料四九万九三二〇円を未経過経費勘定に計上し、当期の法人税確定申告に当たり、右の未経過経費勘定に計上した金額のうち二万六二八〇円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、入会保証料は原告が受領した日の属する事業年度においてその全額を収益の額に計上すべきであるから、原告が当期の収益の額に計上した二万六二八〇円を所得金額から減算すべきである。

(7) 繰越欠損金の損金算入額

原告が青色申告法人であることについては、当事者間に争いがなく、前記(一)(5)で述べたところから明らかなように、前期の繰越欠損金残高は九六九万三一七九円であるから、右金額を当期の損金として認めるべきである。

(8) 課税所得金額

以上によれば、当期の課税所得金額は一億〇一〇六万五二六五円となる。

(三)  昭和五六年三月期

(1) 被告の主張2(三)(2)のうち、ア(申告所得金額)については、当事者間に争いがない。

(2) 資格取得金の収益計上もれ

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に受領した資格取得金一億九一二二万七二一六円のうち二〇分の一相当額である九五六万一三六〇円を当期の収益の額に計上したが、残額一億八一六六万五八五六円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、資格取得金の収益計上もれの額は一億八一六六万五八五六円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(3) 入会保証料の収益計上もれ

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に受領した入会保証料一七五〇万五七六四円のうち二〇万分の一相当額である八七万五二八八円を当期の収益の額に計上したが、残額一六六三万〇四七六円については「未経過経費」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことにつては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、入会保証料の収益計上もれの額は一六六三万〇四七六円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(4) 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容

前期が当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五五年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九六五万一六〇〇円、昭和五五年三月期分として一七八五万二三五五円の合計二九二九万二八〇五円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(5) 前期以前入会保証料の当期計上額の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、昭和五四年三月期及び昭和五五年三月期において受領し、未経過経費勘定に計上した入会保証料のうち、昭和五四年三月期分として二万六二八〇円、昭和五五年三月期分として一一四万六六二七円の合計一一七万二九〇七円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前記と同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(6) 支払指導料の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に支払つた支払指導料七〇二六万六五五〇円のうち二〇分の一相当額である三五一万三三二七円を当期の損金の額に計上したが、残額六六七五万三二二三円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、支払指導料は原告が支払をした日の属する事業年度においてその全額を損金の額に計上すべきである。したがつて、原告が損金の額に計上しなかつた六六七五万三二二三円を所得金額から減算すべきである。

(7) 支払入会手数料の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に支払つた支払入会手数料八五四万一二九〇円のうち二〇分の一相当額である四二万二〇六四円を当期の損金の額に計上したが、残額八一一万九二二六円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、支払入会手数料は原告が支払をした日に属する事業年度においてその全額を損金の額に計上すべきである。したがつて、原告が損金の額に計上しなかつた八一一万九二二六円を所得金額から減算すべきである。

(8) 課税所得金額

以上によれば、当期の欠損金額は一八一五万一四八七円となる。

(四)  昭和五七年三月期

(1) 被告の主張2(四)(2)のうち、ア(申告所得金額)及びカ(道府県民税の損金計上額の否認)については、当事者間に争いがない。

(2) 資格取得金の収益計上もれ

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に受領した資格取得金二億八二七四万四四〇〇円のうち二〇分の一相当額である一四一三万七二二〇円を当期の収益の額に計上したが、残額二億六八六〇万七一八〇円については、「前受契約金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、資格取得金の収益計上もれの額は二億六八六〇万七一八〇円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(3) 入会保証料の収益計上もれ

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に受領した入会保証料三四八二万一二一四円のうち二〇分の一相当額である一七四万一〇六〇円を当期の収益の額に計上したが、残額三三〇八万〇一五四円については「前受入会保証金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、入会保証料の収益計上もれの額は三三〇八万〇一五四円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(4) 前期以前支払指導料の当期損金計上額の否認

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において支払つた支払指導料の金額のうち合計一三〇七万九六四八円を当期の損金の額に計上したことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、支払指導料は原告が支払をした日の属する事業年度においてその全額を損金の額に計上すべきであるから、右一三〇七万九六四八円の損金算入を否認し、右金額を所得金額に加算すべきである。

(5) 前期以前支払入会手数料の当期損金計上額の否認

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において支払つた支払入会手数料の金額のうち合計九〇万二一八七円を当期の損金に計上したことについては、当事者間に争いがなく、前記のとおり、支払入会手数料は原告が支払をした日の属する事業年度においてその全額を損金の額に計上すべきであるから、右九〇万二一八七円の損金算入を否認し、右金額を所得金額に加算すべきである。

(6) 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期として九八九万〇四八八円、昭和五五年三月期分として一八九九万八九八二円、昭和五六年三月期として一〇四三万六六四九円の合計四一一一万四九六九円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(7) 前期以前入会保証料の当期収益計上額の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五六年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定に計上していた入会保証料のうち、昭和五四年三月期分として二一一〇円、昭和五五年三月期として九四万八一三七円、昭和五六年三月期分として八五万四一二九円の合計一八〇万四三七六円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(8) 支払指導料の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に支払つた支払指導料九三二四万四七九〇円のうち二〇分の一相当額である四六六万二二四〇円を当期の損金の額に計上したが、残額八八五八万二五五〇円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、原告が損金の額に計上しなかつた八八五八万二五五〇円を所得金額から減算すべきである。

(9) 支払入会手数料の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に支払つた支払入会手数料一六二四万九〇六四円のうち二〇分の一相当額である八一万二四五三円を当期の損金の額に計上したが、残額一五四三万六六一一円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、原告の損金の額に計上しなかつた一五四三万六六一一円を所得金額がら減算すべきである。

(10) 繰越欠損金の損金算入額

原告が青色申告法人であることについては、当事者間に争いがなく、前記(三)(8)のとおり、前期の欠損金額は一八一五万一四八七円であるから、右金額を当期の損金の額として認め、所得金額から減算すべきである。

(11) 課税所得金額

以上によれば、当期の課税所得金額は一億一〇四二万三六三四円となる。

(五)  昭和五八年三月期

(1) 被告の主張2(五)(2)のうち、ア(申告所得金額)及びカ(道府県民税の損金計上額の否認)については、当事者間に争いがない。

(2) 資格取得金の収益計上もれ

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に受領した資格取得金七億六一二五万八九五〇円のうち二〇分の一相当額である三八〇六万二九四七円を当期の収益の額に計上したが、残額七億二三一九万六〇〇三円については「前受契約金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、資格取得金の収益計上もれの額は七億二三一九万六〇〇三円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(3) 入会保証料の収益計上もれ

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に受領した入会保証料一〇〇六万九〇三八円のうち二〇分の一相当額である五〇万三四五二円を当期の収益の額に計上したが、残額九五六万五五八六円については、「前受入会保証金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、入会保証料の収益計上もれの額は九五六万五五八六円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(4) 前期以前支払指導料の当期損金計上額の否認

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五七年三月期までの各事業年度において支払つた支払指導料の金額のうち合計一七七四万一八八八円を当期の損金の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、右金額を所得金額に加算すべきである。

(5) 前期以前支払入会手数料の当期損金計上額の否認

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五七年三月期までの各事業年度において支払つた支払入会手数料の金額のうち合計一七一万四六四〇円を当期の損金の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、右金額を所得金額に加算すべきである。

(6) 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五七年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定等に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九八九万〇四八八円、昭和五五年三月期分として一八九九万八九八二円、昭和五六年三月期分として一〇四三万六六四九円、昭和五七年三月期分として一四一三万七二二〇円の合計五五二五万二一八九円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(7) 前期以前入会保証料の当期収益計上額の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、昭和五四年三月期から昭和五七年三月期まての各事業年において受領し、未経過経費勘定等に計上した入会保証料のうち、昭和五四年三月期分として二一一〇円、昭和五五年三月期分として九四万八一三七円、昭和五六年三月期として八五万四一二九円、昭和五七年三月期分として一七四万一〇六〇円の合計三五四万五四三六円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(8) 支払指導料の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に支払つた指導料二億七九四八万五四〇〇円のうち二〇分の一相当額である一三九七万四二七〇円を当期の損金の額に計上したが、残額二億六五五一万一一三〇円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、原告が損金に計上しなかつた二億六五五一万一一三〇円を所得金額から減算すべきである。

(9) 支払入会手数料の認容

原告が当期の法人税修正申告に当たり、当期中に支払つた支払入会手数料五〇三万九二五四円のうち二〇分の一相当額である二五万一九六三円を当期の損金の額に計上したが、残額四七八万七二九一円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、原告が損金の額に計上しなかつた四七八万七二九一円を所得金額から減算すべきである。

(10) 事業税の認定損

昭和五七年三月期に係る更正は、後記のとおり適法であるところ、右更正により納付すべきこととなる事業税の額は一二九三万五七六〇円であるから、右金額を当期の損金の額として認め、所得金額から減算すべきである。

(11) 課税所得金額

以上によれば、当期の課税所得金額は三億一一二八万九三五八円となる。

(六)  昭和五九年三月期

(1) 被告の主張2(六)(2)のうち、ア(申告所得金額)については、当事者間に争いがない。

(2) 資格取得金の収益計上もれ

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に受領した資格取得金一六億七二一八万八四〇〇円のうち二〇分の一相当額を超える九〇三二万四三三四円を当期の収益の額に計上したが、残額一五億八一八六万四〇六六円については「前受契約金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、資格取得金の収益計上もれの額は一五億八一八六万四〇六六円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(3) 入会保証料の収益計上もれ

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に受領した入会保証料一四〇三万八三八九円のうち二〇分の一相当額を超える八三万六五五四円を当期の収益の額に計上したが、残額一三二〇万一八三五円については「前受入会保証金」勘定(負債勘定)に計上して当期の収益の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期まてと同様の理由により、入会保証料の収益計もれの額は一三二〇万一八三五円となる。したがつて、右金額を所得金額に加算すべきである。

(4) 前期以前支払指導料の当期損金計上額の否認

原告が当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において支払つた支払指導料の金額のうち合計三一九三万六〇九七円を当期の損金の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期と同様の理由により、右金額を所得金額に加算すべきである。

(5) 前期以前支払入会手数料の当期損金計上額の否認

原告が当期の法人税確定申告に当たり、昭和五五年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において支払つた支払入会手数料の金額のうち合計一九六万五五四八円を当期の損金に額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額に加算すべきである。

(6) 前期以前資格取得金の当期収益計上額の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、昭和五三年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定等に計上した資格取得金のうち、昭和五三年三月期分として一七八万八八五〇円、昭和五四年三月期分として九八九万〇四八八円、昭和五五年三月期分として一八九九万八九八二円、昭和五六年三月期として一〇四三万六六四九円、昭和五七年三月期として一四〇〇万二二〇〇円、昭和五八年三月期として三八〇六万二九四七円の合計九三一八万〇一一六円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(7) 前期以前入会保証料の当期収益計上額の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、昭和五五年三月期から昭和五八年三月期までの各事業年度において受領し、未経過経費勘定等に計上した入会保証料のうち、昭和五五年三月期分として九四万八一三七円、昭和五六年三月期分として八五万四一二九円、昭和五七年三月期分として一七四万一〇六〇円、昭和五八年三月期分として五〇万三四五二円の合計四〇四万六七七八円を当期の収益の額に計上したことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、右金額を所得金額から減算すべきである。

(8) 支払指導料の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に支払つた支払指導料六億九六七三万二五〇〇円のうち二〇分の一相当額である三四八三万六六二五円を当期の損金の額に計上したが、残額六億六一八九万五八七五円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、原告が損金に計上しなかつた六億六一八九万五八七五円を所得金額から減算すべきである。

(9) 支払入会手数料の認容

原告が当期の法人税確定申告に当たり、当期中に支払つた支払入会手数料一九万七二八〇円のうち二〇分の一相当額である九八六四円を当期の損金の額に計上したが、残額一八万七四一六円を当期の損金の額に計上しなかつたことについては、当事者間に争いがないから、前期までと同様の理由により、原告が損金の額に計上しなかつた一八万七四一六円を所得金額から減算すべきである。

(10) 事業税の認定損

昭和五八年三月期に係る更正は、後記のとおり適法てあるところ、右更正により納付すべきこととなる事業税の額は三七〇三万九六八〇円であるから、右金額を当期の損金の額として認め、所得金額から減算すべきである。

(11) 課税所得金額

以上によれば、当期の課税所得金額は六億九二七〇万八六五九円となる。

4  本件各更正の適法性について

本件各事業年度の課税所得金額は以上のとおりであるところ、本件各更正における課税所得金額はいずれも右各金額と同額であるから、本件各更正には原告の所得金額を過大に認定した違法はないものというべきでなる。

三  本件各決定の適法性について

前記のとおり、原告の昭和五五年三月期及び昭和五七年三月期ないし昭和五九年三月期に係る更正は適法であるから、これらを前提としてされた本件各決定も適法である。

四  よつて、原告の本訴請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宍戸達徳 裁判官 北澤晶 裁判官 小林昭彦)

別表1 昭和五三年四月一日から昭和五四年三月三一日までの事業年度分法人税

〈省略〉

(△は欠損金額を示す)

別表2 昭和五四年四月一日から昭和五五年三月三一日までの事業年度分法人税

〈省略〉

(△は欠損金額を示す)

別表3 昭和五五年四月一日から昭和五六年三月三一日までの事業年度分法人税

〈省略〉

(△は欠損金額を示す)

別表4 昭和五六年四月一日から昭和五七年三月三一日までの事業年度分法人税

〈省略〉

(△は欠損金額を示す)

別表5 昭和五七年四月一日から昭和五八年三月三一日までの事業年度分法人税

〈省略〉

(△は欠損金額を示す)

別表6 昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度分法人税

〈省略〉

(△は欠損金額を示す)

別表7

所得計算表(昭和五四年三月期)

〈省略〉

△は、マイナスをあらわす

別表8

所得計算表(昭和五五年三月期)

〈省略〉

〈省略〉

△は、マイナスをあらわす

別表9

〈省略〉

別表10

〈省略〉

別表11

〈省略〉

別表12

〈省略〉

別表13

交際費等の損金不算入額の計算明細書

〈省略〉

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